大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和45年(ラ)634号 決定

抗告人 木館木材工芸有限会社

右代表者代表取締役 木館金吉

右代理人弁護士 岡村顕二

主文

原決定を取消す。

原告渡部正四、被告抗告人間の宇都宮地方裁判所昭和四三年(ワ)第四三三号約束手形金請求事件、原告高瀬ワサ、被告抗告人間の同庁同年(ワ)第四三四号約束手形金請求併合事件において、同四四年二月一二日成立した和解調書の債務名義について、同裁判所書記官は、補助参加人井熊茂に対し強制執行するため、原告渡部正四、同高瀬ワサの承継人である抗告人に執行文を付与すべきことを命ずる。

理由

本件抗告の趣旨及び抗告理由は、別紙のとおりである。

抗告人は、原決定添付別紙和解調書記載の第五項は執行条項であるから、右条項のある和解調書には執行文を付与すべきであると主張する。

案ずるに和解調書第五項は「本件債務は本来参加人が負担すべきものであるから、被告(抗告人)において本条項に基づき金員を現実に支払った場合、その金員について参加人に対し直ちに請求し得るものとする。」というのであり、右は「被告(抗告人)及び参加人井熊茂は連帯して原告渡部に対し本件約束手形金三〇万円、原告高瀬に対し本件約束手形金五〇万円の支払義務あることを承認する。」という第一項及び「被告(抗告人)及び参加人は、第一項の元金を次のとおり分割して、いずれも被告(抗告人)代理人岡村弁護士を通じて原告ら代理人大貫弁護士に、持参又は送金して支払う。イ、金一〇万円を昭和四四年二月末日限り。ロ、残金七〇万円を同年三月から同四五年四月まで毎月末日限り金五万円宛。」という第二項を前提とするものであるが、これらを綜合すると、要するに抗告人及び補助参加人井熊茂は、原告渡部正四に対し三〇万円、同高瀬ワサに対し五〇万円の連帯債務を負担するが、抗告人が右原告らに右債務を弁済した場合、抗告人は弁済した右金員全額について、右井熊に対し求償権を有する旨を明らかにしたものと解することができる。

記録に編綴してある執行文付与申請書及び領収証写(一〇枚)によると、連帯債務者の一人である抗告人は、原告渡部正四に対し三〇万円、同高瀬ワサに対し五〇万円を支払ったことが認められるので、抗告人は債権者である右原告両名に代位し、その求償権の範囲において、右原告両名が右井熊に対し有する一切の権利を行使することができるものといわなければならない。

すると、抗告人は民事訴訟法第五一九条にいわゆる承継人に該当するので、承継の証明書を提出し、承継執行文を付与すべきことを申請できる。

よって、右と異なる原決定を取消して、本件申請を認容することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 浅賀栄 裁判官 岡本元夫 田畑常彦)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例